「じゃ、じゃあ事務所の立ち上げにも関わってるんですか?」


「ええ、そうよ」


当然のように答える薫さん。


なんだ…。


私の勘違いだったんだ。


てっきり嘘をついているのかと思ってた。


私ったら早とちりして…。


バカみたい…。


「ねぇ、優月ちゃん。
私と裕樹が別れたのは聞いてる?」


「あ、はい」


綺麗な細長い指を頬に当てる薫さん。


「裕樹ね。ちょっと変わっちゃった。

離れていた1年8ヶ月の間に」


「え…?」


「好きな子がいたみたいね」


薫さんの言葉に、ドクンと心臓が跳ね上がる。


「誰とは聞いてないんだけど…」


そう言って、視線を落とす薫さん。


「ねぇ。裕樹って今、彼女いるのかな?」


え…?


どうしてこの人は、こんなことを聞くんだろう。


どうして…。


「……いないですよ」


私がそう答えると、薫さんが私の顔をじっと見つめて来た。


「ねぇ。これは私の勘なんだけど」


綺麗な顔で言葉を発する薫さんに、私はゴクッと息を飲んだ。