だけど、知りたい。


この人の本当の気持ちが。


瀬名君を騙しているのかどうか。


「あの…薫さん」


「なあに?」


長い髪が揺れて、上品なストーンのついたピアスがキラリと光る。


女性なのに、なんだかドキドキしてしまう。


「あの、えと。
か、薫さんがこの事務所に入ったのって、いつなんですか?」


「えっ?」


びっくり目を見開く薫さん。


その色っぽい目に戸惑いつつ、私は話を続けた。


「あ、えと。
私、コズミックの洋平君と友達になって。
それで、聞いたんです。
洋平君って、薫さんにスカウトされたんですよね?」


喉の奥が熱くなる。


たったこれだけの言葉を発しただけなのに。


髪を掻き上げる薫さん。


フローラルで女性らしい香りが漂う。


「そうなの。私がスカウトしたのよー。
彼、目立ってたからね」


そう言って薫さんは、ふっと微笑んだ。


「え?でもあの、薫さんがこの会社に入ったのは去年の夏ですよね?
洋平君がスカウトされたのは、その前の春だって聞きました。
それはどうしてなんですか?」


ずっと知りたかったこと。


どう答えるんだろう。この人は。


食べ終わったシュークリームの紙を、くしゅっと丸めて紙袋にしまうと。


薫さんは私の方にゆっくり顔を向けた。


「私ね、ずっと以前から鈴木社長の仕事を手伝ってたのよ。大学の頃からね」


「え…?」


「でも正式入社はあなたが言うように、去年の夏よ。鈴木さんが一緒にやろうって声をかけてくれたの」


そ、それって……。


じゃあ…、嘘じゃないってこと?