スーツを着た男性に紛れて、ロビーへと入る。


天井が高いし、立派なビルだよね。


地下にはコンビニや飲食店もあるし。


私はロビーのベンチソファーに腰掛けた。


ヒマなので、携帯を取り出してみる。


かと言って、別にすることもないけれど。


「優月ちゃん?」


魅惑的な花の香りに視線を向けると、そこには…。


「久しぶりね。こんなところで」


「か、薫さん…」


意外な人物の登場に、息をするのを忘れそうになった。


ウェーブだった髪をストレートにして、スーツを着ている薫さんは、去年海で見た感じとは違っていて。


なんていうか。


すごくカッコイイと思った。


そうか。


このビルで仕事をしているんだから、会ってもおかしくないよね。


「どうしたの?裕樹を待ってるの?」


「あ、はい…」


「相変わらず仲がいいのね」


にっこり笑う薫さんは、やっぱりすごい美人で…。


「あっそうだ。これ食べる?並ばないと食べられないのよ」


そう言って私の隣に座ると、紙袋からガサガサと何かを取り出す薫さん。


綺麗にネイルカラーが施された手で差し出すのは、大きくも小さくもないサイズのシュークリーム。


「これホントおいしくて、すぐ売り切れるの。優月ちゃんにあげる」


「あ、ありがとうございます…」


ぺこり頭を下げて、そのまま視線だけを薫さんに向けた。


上向きにカールされたまつ毛が、本当に綺麗で…。


やっぱりドキドキしてしまう。