「蒼甫。その話、洋平だったら間違いなくすぐに食いつくぞ」


「え?なんで?」


「それくらい良い話ってことだよ」


「瀬名だったらどうする?」


「俺?俺は演技なんて絶対出来ないから、話自体来ないと思う。

でも、ものすごく光栄な話だと思うけどな」


瀬名君の言葉を聞きながら、蒼甫君が手を後ろに回して仰け反った。


「優月。どうしようか」


「えっ?」


それ、私に聞く?


「えっと、うん。すごい話だと思うよ。

重光監督の映画、私は好きだよ」


私がそう言うと、蒼甫君がチラリとイチャさんを見た。


「なぁ、イチャさん。

前にさ、ドラマのオーディションに出たら、俺と優月のデート代を出すって言ってたよね?」


「えっ?えぇ。覚えてるわよ。

ごめんなさいね。まだ渡してなくて」


「それ、今じゃなくてもいい。

その代わり映画に出たらさ、俺と優月を旅行に行かせて」


「はっ?」


私とイチャさんが、同時に声を上げた。


「高校を卒業してからでいいから。

あ、イチャさんがちゃんと引率してくれよな。

俺ら二人じゃ行かせてもらえないから」


イチャさんは、ものすごく情けない顔をしている。


「……わかったわ」


「よっしゃー。俺頑張ろうっと」


急に元気になる蒼甫君。


ちらり瀬名君を見てみれば、明らかに顔が引き攣っていた。