でも当の蒼甫君は、撮影が終わってからは、普通の高校生となんら変わらない日常を過ごしていた。


そうしているうちに、季節は梅雨を迎えて。


私は雨はそんなに嫌いじゃないけど、この湿度の高さは正直いただけない。


今日も外は雨だ。


お昼休み、静華ちゃんとお弁当を食べて、教室で話していた時だった。


「優月」


綺麗な張りのある声に振り返る。


サラサラの髪を揺らして、私に近づいて来る蒼甫君。


「メシ食い終わった?」


蒼甫君が、私の机の上に腰掛ける。


蒼甫君は一日に一度は、こうして私に会いに来てくれる。


「蒼甫はマメねー。渋谷も少しは見習って欲しいわ」


「俺とアイツじゃ、彼女への愛の深さが違うから」


「なによー。渋谷だってちゃんと私の事思ってくれてるわよー」


「はいはい。一人で言っとけ。
ん?優月、今日おとなしいね。どした?」


「えっ?あ。だって、あの…」


「ん?」


だって、さっきからこのクラスの人達の視線がすごいんだもの。


みんながこっちを見ている。


いつものことと言えば、そうなんだけど。


ちょっと違う。


なんかだ違和感がある…。


なんていうか、少し冷ややかな…。