「なぁ、優月。もうすぐしたらドラマの放送が始まるだろ?」


「うん。そうだね」


「深夜枠だけど俺本名で出るから、同じ学校のヤツに見られる可能性が高いんだよな」


「う…ん」


「周りがどういう反応するか、フタ開けてみないとわかんねぇけど。

ちゃんと守るから。

俺が守るからね」


蒼甫君がそう言って、私の髪を優しく撫でてくれる。


その言葉に、涙が出そうになった。


「成り行きでドラマとか出ちゃったけど、俺やっぱり基本的にこの仕事はやりたくない。

次の仕事が来たら、断ろうかと思ってるんだ」


「えっ?」


「俺、普通でいい。

普通に卒業して、普通に大学行って、海で仕事したい。

大学もさ、おじきんとこから通える大学に行こうかと思ってるんだ」


「あ、確かに近くにあるよね。大学が」


「うん。あそこは総合大学だし」


蒼甫君、あの大学を目指してるんだ…。


「優月は?大学どうするの?」


「えっ?あ、えと…、まだ決めてない」


「そうなんだ。

まだ決めてないんだったらさ、俺と同じ大学にしない?

ちょっと距離あるけど、優月の自宅からだって充分通学出来る範囲だし」


「あ、うん。そうだね」


「俺、優月と同じ大学に行きたい。

ずっと一緒がいいな」


トクンと心臓が優しい音を立てた。


私も。


私もずっと蒼甫君と一緒にいたい。


だけど大学は……。


お父さんの会社の事、蒼甫君に話すべきなのかな。