電車の中、横に並んで座る私と蒼甫君。


この時間は人も少なく静かで、背中に差し込む陽射しが暖かい。


電車の振動が心地よくて、瞼が重くなってしまう。


時折ウトウトとしてしまって、蒼甫君の肩にコツンと頭が当たった。


そのたびに、蒼甫君がクスクスと笑う。


「寝てていいよ」


「ううん。起きてる。

寝るなんてもったいないもん。

久しぶりにデートできるのに」


「そか。じゃあ頑張って起きててよ?」


そう言って、優しく微笑んでくれる。


私もにっこり微笑み返す。


電車の床に影がふたつ。


仲良く並んでゆらゆら揺れる。


それを見つめていたら、心がほんわかあったかくなった。


電車を降りると、蒼甫君と手を繋いで公園までの道を歩いた。


おしゃべりが弾み過ぎて、道順なんてさっぱり覚えてない私だった。


「ここだよ」


「わあ…」


川沿いにびっしりと咲き乱れる桜。


はらはらと散る桜はまるで雪のようで。


「綺麗…」


目を奪われた。


「あそこに座ろう」


川沿いのベンチに二人で腰掛けと、早速途中で買ったお弁当を広げた。


時々、お弁当に桜の花びらが入って来て。


思わず一緒に食べそうになった。