守屋さんとイチャさんとの出会いって、バーだったんだ。


ちょっと意外…。


「守屋はその頃、ある芸能プロダクションでマネージャーとして仕事をしてたの。

でも、自分の考え方と事務所の考えが合わなくて、すごく悩んでたのよ。

よくグチを聞かされたものよ」


イチャさんが、懐かしむように遠くを見つめる。


「守屋ってね、すごくいい子なのよ。
仕事熱心だし、人柄も良いし。
情熱を持って、一生懸命仕事してたわ。
営業力もあるしね。話もうまいの。

よく会ってるうちに、なんだか情が湧いちゃってね。
この子を支えてやりたい、なんて思うようになっちゃって」


そう言って、イチャさんがにっこり笑う。


「お店に来てくれる番組プロデューサーやら、芸能関係者ともあたし仲良かったし。

この業界なら、仕事が出来そうな気がしたの。

それで、守屋と一緒にこの事務所立ち上げたってわけ」


「そうなんですね。なんかビックリです…」


「もともとやりたかった歌手とは全然違うけど、でもそれに携わる仕事にいつの間にか就いてた。

夢が叶ったと言えば、そうかもしれないわね」


そう言って、イチャさんが頬杖をつく。


「あたしは表舞台に出る方の人間じゃない。裏でサポートする側の人間なんだってわかった時、すごく気が楽になったの。
そういう生き方が合ってるんだなって。

事務所のタレント達が、クライアントさんに喜ばれる瞬間が、あたしは一番嬉しいのよ」


そう言ったイチャさんが、無邪気な顔で笑った。