「今日、倒産した」


う、うそ…。


目の前にいるお父さんが揺れて見える。


手が冷たくなっていくのを感じる。


その言葉の意味していることが、


わからないほど私は子供じゃない。


こんな日が来るかもしれないってことは、


中学3年の時に言われてた。


だから、覚悟は出来ていた。


出来ていたはずなのに…。


どこか、遠い話のような気がしていた。


でも、こうして現実に落とされると、


その言葉の重さを、思い知らされる。


「優月。そんなに心配しなくていいよ。

諸々の整理が済んだら、新しい仕事を探すから。

今の会社の取引先で、お父さんと付き合いの長い方が一緒に働かないか?って誘ってくれたりもしてるんだ。

どうにでもなるから。大丈夫。

だから、心配はいらないよ」


お父さんはそう言って優しく笑う。


お母さんも、にっこり笑ってくれる。


私を不安にさせないように…。


だから、私もそれに答える。


「わかった」


そう言って笑顔で返した。