その日、瀬名君は学校を早退した。


ずぶぬれの蒼甫君と私が教室に戻ると、みんながビックリして、タオルを持って来て拭いてくれた。


結局。


何も答えは出なかった。


ただ私達三人は、もう引き返すことが出来ない地点にまで来ているんだということだけは、痛いほどわかった。


その日の放課後も、蒼甫君は仕事があってスタジオへ行ってしまった。


瀬名君も蒼甫君もいない教室。


なんだか、胸の奥がチクリと痛い。


私は今日はバイトがないので、一人自宅へ帰った。


家に着き、カギを開ける。


あれ?この靴は…。


お父さん?


お母さんのもある。


私は靴を脱いでリビングへと走った。


リビングの扉を開けて中に入ると、ダイニングテーブルの椅子にお父さんとお母さんが座っていた。


「おかえり、優月」


「どうしたの?珍しいね。二人とも今日仕事は?」


私がそう言うと、お父さんがテーブルの上に腕を置いた。


「優月。ちょっとここに座って」


「ん?うん…」


私はお父さんに言われるまま、お父さんの席の向かいに座った。


私の左にはお母さんがいる。


「どうしたの…?」


なんだか、さっきから二人が妙に静かだ…。


どうしたんだろう?


なんか、あんまりいい予感がしない…。


「優月。あのね。落ち着いて聞いて」


お母さんが私の背中に手を置く。


私はゴクッと息を飲んだ。


「優月…。お父さんの会社な」


え…?