その答えを知っていたかのように、蒼甫君は微動だにしない。


「俺は、ずっと優月が好きだった。

薫が現れてからも、ずっと…。

一度もその気持ちは変わってない」


私はぎゅっと目を閉じた。


怖い。


蒼甫君の次の言葉が…。


「優月、聞いたろ?だから、もう無理だよ」


蒼甫君の声が震えている。


「それでも…。

それでも瀬名のそばにいたいなら」


空気が痛いほど張り詰めて、息をするのを忘れてしまいそうだ。


「俺と別れてからにして」


「……っ」


そう言うと、蒼甫君は保健室を出て行ってしまった。


「蒼甫君っ」


膝がガクガクする。


指が勝手に震えてしまう。


私はその場にへなへなとしゃがみこんだ。


「優月、大丈夫?」


起き上がる瀬名君。


「せ…な君。

私、どうしたらいいの?

もう本当に前みたいには戻れないの…?」


一緒にバイトをした、あの夏のようには…。


薫さんが現れる前のような三人には…。