蒼甫君が私の手をぎゅっと握る。


その力の強さにちょっとビックリしつつ、私は息を潜めた。


「竹内さんは、神崎君の彼女だよね?

瀬名君が思ったって、どうにもならないでしょう?」


「お前、何寝ぼけた事言ってんだよ。もう俺、教室戻るぞ」


「違うなら否定すればいいじゃない」


「は?」


「どうして否定しないの?」


蒼甫君は私の瞳をじっと見つめて離さない。


なんだか、さっきから視界の中の蒼甫君が揺れている。


私の心臓の鼓動があまりに大きいからだ。


蒼甫君がぎゅっと目を閉じて、私を引き寄せる。


頭がゆらっとしたかと思うと、蒼甫君の胸に耳がぶつかった。


蒼甫君の心臓の鼓動、すごく速い…。


私以上に…。


「ほら。違うって言えないじゃない。

瀬名君は、やっぱり竹内さんが好きなんだ。

もういいっ」


そう言うと、その女の子はドアを開けて行ってしまった。


視線を落とし、立ち尽くす瀬名君。


私達もそこから動けなかった。