オーディションへ出る事が決まり、蒼甫君は早速イチャさんと打ち合わせを始めた。


私は自分の席に着いて、書類の整理を始めた。


「ここが竹内優月の席かぁ」


そう言って私に近づく洋平君。


「アイツ、単純だよな」


クスッと妖艶に笑いながら、私の机にもたれた。


「いいも悪いも、お前はアイツにとって強みでもあるし、弱みでもあるよな」


「どういう意味?」


洋平君が髪をかきあげる。


「いいように転べばいいけど、下手すりゃ悪いほうにだって転ぶ」


うーん。


言ってる意味がわからない。


「アイツはお前次第って事だよ。お前にベタボレだから」


洋平君にそう言われて、私は顔が赤くなっていくのを感じた。


しばらくすると、イチャさんと蒼甫君が応接スペースから出て来た。


「あーっ!こらっ、洋平っ。優月に近づき過ぎてんじゃねーぞ」


そう言って、つかつか私の席に来る蒼甫君。


「ちょっと話してただけじゃん」


「近いんだよっ」


「へいへい。離れればいいんだろ?離れればー」


膨れっ面の蒼甫君。


私は頭を抱えた。


「蒼甫は嫉妬深いのねぇ…」


イチャさんも呆れちゃってる。


ふぅ。


なんか今日のバイト、しんどいよう。