「優月ちゃんと蒼甫と一緒に、あなたが来るなんてビックリだわ」


「俺達、もうすっかり仲良しなんです。クリスマスも一緒に遊んだりして」


「まぁ。そうだったの。
ーで今日はどうしたの?
何か用事でも?」


私は洋平君とイチャさんの前にお茶を置いた。


応接スペースの入口にとりあえず立ってみる。


私のすぐ後ろには蒼甫君が、訝しそうに中を覗き込んでいる。


「実は俺、春から放送のドラマのオーディションに出るんです。
主人公の弟役で」


「あらー。コズミックにも話が来てるのね。
コズミックからはあなたが出るのね~」


「イチャさんの事務所からは神崎が出るんでしょ?」


「えっ?あぁ。
あたしはそうしたいんだけど、当の本人がねぇ…」


チラッと蒼甫君を見るイチャさん。


「俺は出ねーよっ」


膨れっ面の蒼甫君。


「ねぇ、高田さん。
俺は神崎にもこのオーディションに出てもらいたいんだ。
ちゃんと戦って役を勝ち取りたい」


洋平君の言葉に、イチャさんが目を輝かせる。


「まぁっ。よく言ってくれたわ。
あなたって偉いわね!
普通ならライバルが一人でもいない方がいいでしょうに」


「神崎はパーフェクトだから」


私は持っていたお盆をぎゅっと抱きしめた。


誰かが蒼甫君を褒めるたびに、私は嬉しいどころか不安になる。


どこかへ行ってしまいそうで…。