「ごめん。話は変わるんだけどさ。近々俺オーディションがあるんだ」


「えっ、そうなの?何の?」


「春から放送予定のドラマなんだ」


あれ?それってもしかして。


「ねぇ。もしかして主人公の弟役?」


洋平君がきょとんと目を見開く。


「うん。そうだよ。あれ?そっちにもオファー来てんだ」


「うん」


「誰が出るの?」


「イチャさんは蒼甫君を推してるけど、蒼甫君は受けないと思うな」


あれから何度もイチャさんにお願いされたけど、私は蒼甫君には話していない。


「なんで?」


「蒼甫君ね、全然興味がないし、やる気がないの」


蒼甫君、もう二度と仕事は引き受けないって言ってたもんね。


「マジかよ、アイツ。なんで出ないんだよ」


チッと舌打ちをする洋平君。


洋平君は蒼甫君に出て欲しいのかな?


「何社かオファーがいってるんだよね?
だったら、一人でもライバルが少ない方が、洋平君にも有利だと思うけどな」


私の言葉を聞きながら、あ洋平君が顔をしかめている。


「そんなの、なんか不戦勝みたいでイヤだ…」


ボソッとひとり言のように呟いて、フッと息を吐く洋平君。


「俺は正々堂々アイツと戦いたい。

俺から見ると神崎って、この世界にピッタリの人間のような気がするんだけどな」


「蒼甫君が…?」


「アイツ、本当に光ってるからな」


そう言えば、イチャさんもそんなことを言っていた。


埋もれさせるのはもったいないって。


「でも、本人にやる気がないんだよ?」


「それでも!それでも表舞台に出て欲しい」


そんなこと言われたって…。


「神崎は今回のオーディションのこと、知ってるのか?」


「ううん。話してないよ」


「じゃあ、俺から話してやる」


「は?」


今、なんて?


「俺がアイツを説得してやるよ」


ちょっ、ちょっと待ってよ!


なんでー?