最終日の三日目、私は瀬名君のそばに近づく事が出来なかった。


怖かったというよりも、自分があのキスに酔ってしまったことが許せなかった。


蒼甫君だと思っていたから…と言えば、言い訳になるかもしれない。


でも、そんな言い訳が通用するはずがない。


自分の恋人が他の人のキスに酔っていたなんて、そんなの聞いたら誰だって許せないと思う。


どうして?


どうしてキスなんてしたの?


蒼甫君がすぐ隣にいたのに…。


薫さんは…?


薫さんに対して、裏切りにならないの…?


瀬名君の考えてることがわからない。


最終日はフリータイムなので、みんな思い思いに滑っていた。


私は一人でリフトに乗り、山の上からボーッと景色を眺めていた。


今日は本当に良い天気で、遠くの山までハッキリ見渡せる。


全てが真っ白い世界。


雪に太陽の光が反射して、とてもまぶしい。


「優月」


私を呼ぶ声がする。


この声は…。


「瀬名君…」


白い山をバックに立つ瀬名君は綺麗で…。


それはそれは本当に綺麗で…。


思わず見とれてしまうけど。


でも…。


「優月、話がある」


私は黙って頷いた。