マスターにお金を払い、俺達は店を出た。


どうするかな。


俺はちょっと本屋にでも寄ろうかな?


『じゃあここで』と言おうとした時、竹内優月が突然走り出した。


「お、おいっ、待てよ」


何なんだよ、いきなり。


追いかけて駅ビルの外に出ると、一面にクリスマスのイルミネーションが広がっていた。


ははあ、なるほどな。


コイツ、これを見つけて飛び出したんだな。


イルミネーションを見に来ているカップルが大勢いるみたいだな。


「さむっ」


さすがに外は寒いな。


コートの襟を立てる。


ちらり横目で竹内優月に視線をやれば、イルミネーションを見ながら、目をキラキラさせていた。


けっ、乙女だね。


アホらし。


「洋平君。ここ、すごく綺麗だね」


そう言うと、竹内優月が俺を見て笑った。


あれ?


コイツが笑った顔、初めて見たような気がする。


なんか…。


気のせいか?


上を見上げてほほえむ竹内優月。


青いダイオードの光が、コイツを優しく包んでいる。


柔らかい空気をまとって、飛ぶように歩く。


天使…?


「おいっ」


俺は思わず呼び止めた。


「ん?」


そう言って振り返ると、目を細めてにっこりと笑った。


「……っ」


な…んだよ。


何なんだよ。


やべぇ。


なんで俺、ドキドキしてんだろ?


こんな普通の女に…。