「なぁ。裕樹ってさ、お前の事が好きだったんじゃないのか?」


「え…?」


ど、どうしよう。


そんなこと、私の口から言えるわけない。


「そうなんだろ?」


洋平君の鋭い目が光り、私はたまらず視線を落とした。


「言いたくないなら別にいいよ。まぁ、多分間違いないからさ。

それにしても裕樹は、お前のことが好きだったくせに、なんでポッと出てきた元カノとあっさり復活するかね?

お前が神崎と付き合ってるから、お前を忘れるために樋口さんと付き合ってるとか?」


「えっ、それは違うよ。

私と蒼甫君が付き合い始めたのは、瀬名君と薫さんが付き合い始めた後だもの」


言った後で、変な汗が流れた。


洋平君にここまで話す必要があるのだろうか。


洋平君に睨まれると、どうも自分のペースが乱されてしまう。


「うーん。なんかますます腑に落ちねぇな。

薫さんと復活したのって、何か事情でもあるのか?」


そう言って、洋平君が頬杖をつく。


洋平君ってすごく鋭い人だと思う。


今日たった一日一緒にいただけで、ここまで私達のことを見抜いてしまうなんて…。


私は、自分の手をぎゅっと握り締めた。


「お待たせしました」


その声にドキッとして顔を上げると、お店のマスターがコーヒーを持って来てくれていた。


少し来るのが遅いなと思ってたけど、その場で豆を挽いていたから、すごく丁寧に入れられたコーヒーのようだ。


「ごめん…。事情は…言えないの」


薫さんが瀬名君の赤ちゃんを妊娠していたこと。


それだけは口が裂けても言うわけにはいかない。


私はコーヒーにミルクを注いだ。


洋平君もコーヒーを口にする。