「瀬名君、本当はモデルの仕事なんてやりたくなかったの。

でも、薫さんのためだから…」


そう。


だから、瀬名君は一生懸命やってるんだ。


洋平君がさらに顔をしかめる。


「本当はやりたくないことなのに、それが出来るくらい、樋口さんの事が好きなんだったら…」


「え…?」


「どうしてアイツはお前のことを、あんなに心配するんだ…?」


「え……?」


洋平君の言葉に、心臓から血液が大量に流れ出たような気がした。


「今日のアイツの態度を見ていて思ったんだ。

アイツ…お前のこととなると、全然余裕がなくなるんだ。

妙にピリピリしててさ。

突然、帰ったのも不自然だったし。

2階で何かあったのか?」


「2階?」


私はハッとして、口元に手を当てた。


「あ、えと…。それは…」


「どうした?言いにくい事なのか?」


「み、見られちゃったの。

蒼甫君と、その…」


「あー…」


洋平君が顎を上げて、目を細める。


「大体想像はつくよ」


そう言って腕を組む洋平君。


うぅ…。


「それでアイツは動揺して帰ったんだな」


瀬名君…。


体調が悪くて帰ったんじゃなかったんだ…。