「なぁ、竹内優月」


急に名前を呼ばれて、ドキッと心臓が跳ね上がる。


なんでフルネームで呼ぶのだろう…。


「今6時過ぎだけど、もう帰らないといけないのか?」


「え?」


「ちょっと、ゆっくり話さないか?」


どういうこと?


「裕樹の彼女の事、聞きたいんじゃないのか?」


洋平君がチラリ、私を見る。


その流し目がゾクゾクするほど綺麗で、思わず視線を逸らした。


「聞きたい…」


私は前を向いたまま答えた。


「じゃあ、決まりだな。次で降りるぞ」




次の駅に到着すると、私と洋平君は電車を降りた。


この駅の利用客は多く、沢山の人がこの駅で降りた。


人ごみにまみれて、洋平君の後ろを歩く。


一体どこへ行くんだろう。


「竹内優月。ここに入ろうか」


そう言って洋平さんが指差すのは、なんだかレトロな雰囲気の喫茶店で。


ステンドグラスみたいな扉を開けて、私達はその喫茶店に入った。