「瀬名は相変わらず、優月を励ますのがうまいよな」


「はっ?何言ってんだよ」


「前からそうだよ。お前はよく優月の事見てるし、よくわかってる。

たまに思うんだよ。

薫さんが現れてなかったら、優月は俺を選んでただろうかって」


「蒼甫君?」


ど、どうしてそんなこと言うの?


「蒼甫。そんなバカな事言ってたら、いくらお前でも許さねぇぞ」


瀬名君の顔が険しい。


「……ごめん」


蒼甫君、そんなこと思ってたんだ。


ずっと、気にしてたんだね…。


「俺はこうなる運命だったんだよ。

薫に再会する運命だったし、モデルをやる運命だったんだ。

もし、薫が現れてなかったら…なんて、そんな選択肢は存在しない。

だから、蒼甫は何も考えなくていい」


「瀬名…」


「自信のないお前なんて、お前らしくないぞ。
しっかりしろよな。

俺、先に教室行くわー。
じゃあなー」


そう言うと瀬名君は重い扉を開いて、教室へ戻って行った。


蒼甫君はベンチに頭をもたれて、身体をのけ反らせている。 


私はそれを横目で見ていた。


「瀬名の言う通りなんだよなー」


「えっ?」


「俺、大抵の事はこなせる自信があるのに、優月のこととなると、全然自信がないんだ…」


蒼甫君が仰向けのまま、目を閉じる。


本当に整った顔…。


蒼甫君は、完璧なくらい綺麗なのに。


「どうして自信がないの?」


私は聞いてみた。