瀬名君は、私と蒼甫君が付き合い始めた事に関して何も言わなかった。


私達も、薫さんとの事を瀬名君に聞いた事は一度もなかった。


「ねぇ、瀬名君。
もし瀬名君がモデルになる事を選んでなかったら、将来何になりたかったの?」


「ん?何、突然」


「ちょっと聞いてみたかったの」


「俺は…」


瀬名君のやりたかったこと。


私は聞いてみたかった。


「建築家…かな」


「へぇ…。意外だな」


蒼甫君が目を丸くさせる。


「俺、子供の頃から、空間を考えるのが好きなんだ。
いつか、自分が設計した家を母親にプレゼントしたかった…かな」


瀬名君にそんな夢があったなんて。


「美容師も良いかなって思ってた。ヘアスタイルを考えるのは嫌いじゃない」


瀬名君の夢は、お母さんと密接なんだね。


「蒼甫は?」


「えっ?俺?」