「神崎、この前は悪かった。

あの子は、ホントに事務所のスタッフだったんだな。

俺はてっきり、お前が仕事場に女を連れ込んでるんだって勘違いしてたんだ」


申し訳なさそうに頭を掻くヨウヘイ。


いや、その通りなんだけどな。


そのことで俺も話がしたいって思っていた。


「謝ることはないよ。半分は本当の事だから」


「は?」


「優月は俺の彼女だよ」


ヨウヘイが大きく目を見開いている。


まぁ、驚くのも無理もないよな。


「この仕事、ちょっと色々あって、成り行きで引き受けたんだ。

やる気なんて全然ないし、優月が来ないなら行かないとか、ワガママ言ったりもしたんだ」


ヨウヘイは何も言わず、ただ黙って俺の話を聞いている。


「でも」


俺は息を大きく吸って、ふぅっと強く吐き出した。


「この前、ヨウヘイに言われてすげー反省したんだ。

確かに俺、この仕事をナメてた」


頼まれて仕方なくやるんだし、ずっとやるわけじゃないからって…。


「でも、瀬名もヨウヘイも真剣にやってる。

そんな二人の思いも知らずに、本当に申し訳なかった」


深く頭を下げて頭をゆっくり上げると、ヨウヘイは切れ長の目で俺を真っ直ぐに捉えていた。


「だから、この仕事だけは最後まできちんと引き受けようって思ったんだ」


そう。


中途半端なことはしたくなかった。