段ボールの影からチラリ教室の中を覗くと、ヨウヘイさんは帰ったようだった。


はぁ。良かった。


ホッとして、教室の中へ出た。


「おい、優月」


ドキッと心臓が跳ね上がる。


「お前、どういうことだよ?」


「出るなって言ったのに、なんで出たんだよ!」


ひぃーっ!怖い。


そのメイクした顔で睨まれると余計に怖い。


二人とも怒ってる?


怒ってる…よね?


うー。


「ごめんなさい。

ちゃんと中に隠れてたんだけど、途中でどうしてもトイレに行きたくなっちゃって…。

でも、このまま出るわけにはいかないから、変装しようと思って。

それで、渋谷君が脱いだカツラをかぶってみたんだけど、金髪だったからすごく不自然で、かえって目立ちそうだったの。

だから、あの衣装を着て出て行ったの。

二人とも気づかなかったでしょ?」


蒼甫君と瀬名君が呆気にとられている。


でもその直後プッと吹き出して、そのうち二人はおなかを抱えて笑い出した。


「はーはははは」


何がそんなにおかしいんだろう?


し、失礼しちゃうなあ。


「ひーっ。くくっ。
優月、やることが面白いよなー。さすがだわ」


瀬名君っ!


何がさすがなんだか。


女装した大きな男子に言われたくないな。


「ひーっ。腹痛ぇー。

あ?あれ?それ誰の携帯?」


蒼甫君の視線の先を見ると、さっき三人が座っていた席のテーブルに、携帯が置かれていた。


「あ、これ。ヨウヘイのだ」


えっ?ヨウヘイさんの?


ってことは、彼、戻って来るんじゃないの?


「あっ!」