バイトの帰り道、私と蒼甫君は黙ったままだった。


まさか、瀬名君と同じ仕事を紹介されるなんて…。


瀬名君は相変わらず、モデルの仕事の話はしてくれない。


楽しくやっているならいいんだけど、一体どんな気持ちでやっているのか…。


やっぱり、ずっと気になっていた。


瀬名君に話を聞けるチャンスだけど、だからと言って、蒼甫君にモデルの仕事をやって欲しくはないし。


「優月、俺どうしたらいいのかな。瀬名の事は心配だけど、でも…」


私の顔をチラリと見つめる蒼甫君。


「優月、嫌だろ?俺がモデルなんかするの」


「うん…。嫌だよ。私は蒼甫君に有名になんてなってほしくない」


「どうして?」


「有名になって人気者になったら、私の前からいなくなっちゃうもん」


「なんでそう思う?」


「だって、芸能界って素敵な人ばかりいるし。私の事なんてきっとすぐに忘れちゃうよ」


「はぁー?何言ってんだよ。なんでそうなるって決めつけんの?」


「だって…」


だって、そうだもん。


芸能人が相手じゃ、どう逆立ちしたって勝てっこないよ。


「蒼甫君だって、私にモデルは引き受けるなって言うでしょう?あれはどうして?」


「女と男じゃ違うだろ?女は何かと心配じゃん。誰に何されるかわかんねーし。

それに水着とか、絶対ダメだし」


「水着の何が問題?」


私達、めずらしく言い合いしてる。


まあ、いいよね。たまには。


「バ、バカか!大問題だろうが」


「バカって何よ。どうせ私はスタイル悪いですよーだ」


「ちょっ、そういう意味じゃなくてっ。

優月の水着姿を、誰にも見せたくないからに決まってんだろ?」


「……。なんで見せたくないの?」


「それは、だって…。俺の優月だから、独占したい」