「ごめんな。怒ってる?」


そう言うと、俺は優月の顔を覗き込んだ。


「怒ってないよ。ちょっとビックリしただけ。

私…蒼甫君が初めての彼氏だから、こういう経験って全くなくて」


優月は、俺にそういう経験があるって思っているのかな?


「優月。俺も経験ないよ」


えっ?という表情をする優月。


意外だったかな?


「静華に聞いたらわかるよ。俺、サーフィン馬鹿だったし、彼女なんて居たことない」


「えっ、でも蒼甫君、中学の頃すごくモテてて、海にもいっぱい女の子が見に来てたんでしょう?」


「うーん。それはホントだけど、誰とも付き合ってはないよ」


優月は信じられないって顔をしている。


あーじゃあ、正直に話そう。


「1個残念だけど、キスは優月が初めてじゃない」


俺の言葉に優月の動きがピタリと止まる。


「初めてはさ、中2ん時。学校の先輩に勝手に奪われた」


「えっ?」


「それに俺、女子の方から大胆に迫られたりしたの、一度や二度じゃねーよ」


「うそっ」


優月の大きな目が、さらに大きくなった。