季節は本格的な秋へと突入していた。


中間試験が控えていたけど、私と蒼甫君は、蒼甫君が受けるオーディションのことで、たびたびイチャさんの事務所へ呼ばれていた。


蒼甫君は、オーディションを勝ち取るためのレクチャーをイチャさんから受けつつも、半分聞いてないような、そんな感じだった。


「ちょっと、蒼甫。少しはやる気出しなさいよ。

このオーディションを受けられるだけでも、すごいことなんだから」


「なぁ、イチャさん。当日は優月も一緒に行けるの?」


「……っ!

その日だけはダメ。

その日は守屋と一緒に行ってもらうからね」


「守屋って誰?」


「ウチのマネージャーよ」


「えー。優月が一緒じゃなきゃやだ」


「もう!子供みたいにダダこねてんじゃないわよ」


「だって、まだ子供だもーん」


「キィーーッ」


あぁ…。


なんだか頭が痛い…。