次の日のお昼。


私と蒼甫君は屋上に来ていた。


最近、私と蒼甫君は屋上に来ることが多くなった。


みんなには話せない、秘密の話が増えてしまったからだと思う。


「書類通っちゃったんなら、やるしかないよな」


「ごめんね、蒼甫君。こんな大変なことになっちゃって」


「別に大丈夫だよ。

基本、俳優の卵ばっかりが来るんだろ?

だったら俺なんて、相手にされないだろ?」


「でも、あの番組に出ちゃったら、蒼甫君、有名になっちゃって。

そうしたらきっと、私の前からいなくなっちゃうよね?」


最近私は、そんなことばかり考えてしまう。


私だけの蒼甫君でいてほしいって。


そればかり…。


「優月?

俺が消えるとか消えないとか、そういう心配、最近よくするよね。

瀬名が薫さんと付き合い始めてから、特によく言うようになった」


そうかもしれない。


あの時の胸を裂かれる思いを、私はもう二度としたくないのかもしれない。


あんな苦しい気持ちになるのは、もう…。


「蒼甫君…」


「ん?」


「ぎゅってして欲しい」