その日の放課後、私はバイトがあるので、急いでカバンに荷物を収めていた。


「優月、一緒に帰ろ」


「蒼甫君。私、今日バイトがある日なの。駅まで一緒に帰る?」


「うん」


私達は教室を出て、階段を降りた。


校庭へと出た途端、蒼甫君が私の手を握る。


ドキッと心臓が跳ね上がる。


私がびっくりしているのも構わずに、蒼甫君は私の手を引いて歩いている。


なんだか近くを歩いている人達の視線を感じる。


それは無理もない。


だって、蒼甫君なんだもの。


ただでさえ目立つ存在なのに、その彼が私と手を繋いで歩いてるんだから。


うぅぅ。


視線が痛いよー。


「なあ優月。

今日、優月のバイト先まで一緒に行っていい?

中には入らないから。

送るだけ」


「えっ?

それは別に構わないけど…」


ん?


あれ?


前にもこんな事があったような…。


私達は一緒に電車に乗って、イチャさんの事務所へと向かった。