「あっ、優月の玉子焼きうまそう。ひとつちょーだい」


蒼甫君が私のお弁当箱を覗き込んでいる。


「いいよ。どうぞ」


私がお弁当箱を差し出すと、蒼甫君が『あーん』と口を開けた。


えっ?それって…。食べさせろってこと?


みんな見てるのに?


「早くー」


私は仕方なく玉子焼きをお箸で掴んで、蒼甫君の口へと運んだ。


「んー。おいひーっ」


満面の笑みで笑う蒼甫君。


無邪気で可愛いけど、みんなの前だし、恥ずかしいよ。


「ちょっと蒼甫。あんた、デレデレし過ぎよ!みっともない」


「何がみっともないんだよ。お前こそ、渋谷にやってやれよ。

渋谷だって、してほしいよなー?」


「ちょっ、何言って…。えっ?」


渋谷君が目をキラキラさせて、子犬みたいな顔をしている。


「渋谷。まさか渋谷も、アレをして欲しいわけ?」


渋谷君が『うんうん』と頷く。


静華ちゃんは強張った顔をしながら、震える手で渋谷君の口に玉子焼きを運んだ。


「うまーい。最高」


渋谷君は嬉しそうだ。


「な?いいもんだろ?」


「く、屈辱だわ」


なぜか悔しがる静華ちゃん。


渋谷君、なんだか蒼甫君に影響され始めてるような…。


ははは…。