あまりにショックで、頭の中がグルグルしてしまう。


心臓がうるさいくらいバクバク鳴って、胸が痛くて苦しい。


それでも私は、走る足を止められなかった。


「竹内っ?」


澄んだ声で名前を呼ばれて、カツンと靴を鳴らして立ち止まった。


「渋谷君…」


驚いた顔の渋谷君の背後に見えるのは『1-1』の文字。


いつの間にか、1組の棟まで来ていたんだ。


「どうしたの?こんなところで。

ちょっ、顔が真っ青じゃん!大丈夫?」


「え?あぁ。なんでもないよ」


あわてて頬を両手で隠した。


「なんでもなくないでしょ?
何かあったんでしょ?」


「大丈夫だよ。ホントに何もないから」


私が笑って見せると、渋谷君はきゅっと目を細めた。


「ごまかそうとしてもダメだよ。竹内ってわかりやすいから、ハッキリ言ってバレバレなんだよね」


「え?」


私ってわかりやすいの?


「俺でよかったら聞くから。お願い。話して」


渋谷君が私をじっと真っ直ぐに見つめている。


この人にこれ以上ごまかすのは、私には無理かもしれないな。


ふぅと息を吐いて、私は静かに口を開いた。


「実は…」