「嘘つくなよ」


「え…?」


「ホントは薫さんのところへ行って欲しくなかったんだろ?

応援なんてしたくないんだろ?

違う?」


「そんなことっ」


「思ってない?」


私は、瀬名君が幸せならそれで…。


ううん。


違う。


蒼甫君の言う通りだ。


瀬名君がいなくなって寂しい。


本当は薫さんのところへなんか、行って欲しくなかった。


今までみたいに、ずっとそばにいて欲しかった。


そんなの、私のワガママなのに。


そんなこと、願っちゃいけないのに。


「…うっ」


瀬名君の気持ちが痛くて。


あの日のキスが、あまりにせつなくて…。


どうして好きだなんて言ったの?


瀬名君の思いを知らなかったら、こんな苦しくなかったのに。


ちゃんと二人のこと、応援出来たのに。


私は溢れてくる涙を抑えることが出来なくて。


そして気がつけば、蒼甫君に抱きしめられていた。