すると、あぐらをかいて座っていた蒼甫君が、私がいる方向に体の向きを変えた。


私の正面に座る蒼甫君。


真っ直ぐに見つめられて、なんだか恥ずかしい。


「優月。

瀬名に好きって言われた?」


「……っ」


蒼甫君…、どうしてそれを?


私は答えに困って目を伏せた。


「言われたんだな。そうか…」


蒼甫君がふぅとため息をつく。


「優月に好きって言っておいて、アイツ薫さんのところへ行ったんだな。

それは優月、落ち込むよな」


蒼甫君が両手を後ろについて、身体をのけぞらせる。


「どうせ去るんだったら、黙って行きゃいいのに。

まぁ…言わずにはいられなかったんだろうな」


そうかもしれない。


瀬名君の気持ちを聞いてなかったら、こんなに苦しくなかったのかもしれない。


「確かに瀬名は優月が好きだった。

だけどさ、アイツはもう薫さんといる事を選んだんだ。

だからさ、応援してやろうよ」


そんなの…。


そんなの言われなくても、最初からそのつもりだよ。


「もちろん…、応援するよ」


私がボソッと言った言葉に、蒼甫君は顔をしかめている。


そして、スッと腕を伸ばして来たかと思うと、私の髪をくしゃくしゃっとかき回した。