「優月、瀬名がいなくなってから元気ないね。

わかるよ。俺も、なんか寂しいから」


そう言うと、蒼甫君はポケットから携帯を取り出した。


「実は今日、瀬名からメールが来たんだ」


「えっ?」


瀬名君からメール?


「とりあえず、薫さんが田舎に帰るのは阻止出来たってさ。

でも薫さん、仕事を探さないと生活できないから、これから就職活動で忙しくなりそうなんだって」


そう…。


瀬名君、薫さんを引き止める事が出来たんだね。


良かった…。


「優月。瀬名と薫さんが付き合い始めて寂しい?」


「えっ?」


それは……。


どう答えたらいいんだろう。


「あのさ、優月。

別にこれからだって、学校に行けば瀬名に会えるだろ?

だからそんなにさみしがるなよ」


蒼甫君…。


瀬名君はね、今まで通りに接してくれないかもしれない。


だって、あれは。


あのキスは…。


最後を意味していた…。


「優月…?」


私はハッとして顔を上げた。


「あっ、えと。寂しいっていうかね。

今までずっと一緒に過ごしてた人が急にいなくなったから、ちょっと戸惑ってるだけなの。

でももう大丈夫。ちゃんと元気出すね」


そう言って、にっこり笑って見せた。


そんな私を見て、蒼甫君がやれやれと言う顔をする。


「優月は嘘がヘタだね」


クスッと笑う蒼甫君。


「ちょっと、優月。隣に座って」


そう言って蒼甫君が手招きをする。


私は戸惑いつつも椅子から立ち上がって、蒼甫君の隣にちょこんと座った。