しばらくすると、蒼甫君がお風呂から上がって来た。


蒼甫君はお茶を飲むと、私の斜め前にあるソファーに腰掛けた。


私達は特に会話もなく、ただ黙って座っていた。


すると突然、蒼甫君がスッと立ち上がった。


「優月、もう歯みがきしちゃった?」


「えっ?あ、うん。したけど?」


「じゃあ2階に行こうか」


どうしたんだろう?蒼甫君。


もう寝るってこと?


まだ20時だけど?


蒼甫君はリビングの電気とエアコンを切ると、廊下へと出た。


私も蒼甫君の後に付いて、2階へと上がる。


そして、自分の部屋に入ろうとしたその時だった。


「優月、ちょっと話さない?」


「えっ?」


「ちょっと話があるんだ。こっちの部屋に来て」


一瞬ビックリしたけど、私も蒼甫君と話さないといけない気がして、部屋へ入ることにした。


中に入ると、床に直接敷かれた布団と、パソコンデスクのような机と小さな椅子が目に入った。


部屋の端には、綺麗に畳んだ布団が一式置かれている。


おそらくあれは瀬名君が使っていたんだろう。


蒼甫君はエアコンのスイッチを入れると、床に敷いてある布団に座った。


私は椅子に腰かけた。


フローリングのシンとした部屋。


私が少しでも動くと、椅子の音がカタンと響き渡る。


「瀬名がいなくなったら、急に部屋が広くなった気がするよ」


そうだよね。


いつも二人で寝泊まりしてたんだもんね。