それから数日経った日の放課後のこと。


トイレに行った後、ペンケースを忘れたことに気づいた私は教室へと引き返していた。


教室に入ろうとしたその時、教室の中から女子数名の話し声が聞こえて来た。



「ねぇ。



竹内さんってムカつくと思わない?」





突然出て来た自分の名前に、全身が凍りついた。


私のこと話してるの?


とっさにドアの横の壁に身を隠す。


ムカつくってどういう事?


私、何をしちゃったんだろう?


ほとんど話した事がない子達なのに。



「ホント、いつも神崎君と瀬名君と一緒でさー。何様なんだろうね」


え…?蒼甫君と瀬名君?


「あの子がいるせいで、瀬名君と神崎君に近づけやしない」


「ひとり占めしたいんじゃないの?」


「あんなイイ男をふたりも?生意気ー」


「瀬名君達もどこがいいんだろうね」


「神崎君、カラオケ誘っても行ってくれないんだよね」


「あー、私も瀬名君と話したーい」


「あの子、マジうざいよねー」


「地味で可愛くもないくせにねー」


女の子達の笑い声が教室中に響き渡る。


そんな…。


どうしよう。


私、女の子達にそんなふうに思われていたんだ。


膝が勝手にガクガク震えて、指先も震えている。


冷たくなった手をぎゅっと握り締めて、私はその場から急いで走り去った。