瀬名君の前髪が風に揺れて、私の瞼を優しく撫でる。


重なった唇は数秒だけ触れて離れていき、またぎゅっと抱きしめられた。


「優月…」


涙声の瀬名君。


泣いてるの?


どう、して…?


「優月が好きだった。

本気で好きだった。

俺が、守りたかったのに…っ」


「瀬名君…」


瀬名君は力なく、私から腕をそっと下ろした。


「優月、先におじさんの家に帰れ」


「え…?」


瀬名君は下を向いたまま、私の方は見ない。


「俺は少し遅れて帰るから」


どう…して?


いやだ、そんなの。


私、まだここにいたい。


瀬名君と一緒に…。


瀬名君を置いてなんか行けない。


どこかへ行っちゃいそうで。


私は思わず、瀬名君のシャツにしがみついた。