潮風が私達の間を優しくすり抜けていく。


「入学してからずっと…。

まぁ、一目惚れかな」


そう言うと、瀬名君は私の頭を右手で優しく撫で始めた。


「薫にフラれて、もう誰も好きになれないって思ってたのに。

優月はいつの間にか、俺の中で大きな存在になってて…。

守ってやりたいって、ずっと思ってたよ」


どうしよう。


心臓の鼓動が、どんどん速くなっていく。


「でも、もう優月のこと守ってやれない。

ごめんな」


「瀬名君…」


どうしてそんなことを言うの?


もう二度と会えないみたいに。


これが最後みたいに言わないで。


瀬名君の右手が私の頭からするりと肩に落ち、その手でぐっと引き寄せられる。


そして、反対側の手が私の背中へと回り、ぎゅっと抱きしめられた。


「優月…」


瀬名君の腕に力が込められる。


その腕は小刻みに震えている。


私は自分の手を瀬名君の背中に回し、そっと撫でた。


瀬名君の震えが止まるようにと願いながら…。


しばらくそうしていると、瀬名君が私から少し体を離した。


私の顔をじっと見つめ、目を細める瀬名君。


次の瞬間。


瀬名君の顔が近づいて来て。


瀬名君の唇が、私の唇に到着した。