夜道を海の方へ向かって歩く。


大きい道路へ出ると、海岸に向かって歩いた。


夜は、昼間より風が強いみたいだ。


お風呂上がりの少し湿った髪が風に舞う。


海岸へ到着すると、私達はコンクリートの上に腰掛けた。


サンダルの下には砂浜が広がっている。


遠くで花火をしている親子がいるようだ。


瀬名君は黙って、その親子の様子を見ている。


私はその沈黙が苦しくて、先に話しかけた。


「瀬名君、あの…」


震える声を発すると、瀬名君が視線を下に落とした。


「俺、バカだよな。

何にも知らなかった。

俺が何も知らない間に、薫は一人で苦しんで、たった一人で俺の子を!

俺は最低だ」


瀬名君がそう言って両手で頭を抱え込む。


「このまま田舎に帰すわけにはいかないよな。

アイツ、こっちでやりたいことがあったはずなのに。

アイツの人生かき回したのは俺だ。

俺に責任があるんだ…」


瀬名君はゆっくり頭を起こした。


そして、真っ黒い海をじっと見つめている。


瀬名君、責任を感じてるんだね。


そうだよね。


薫さんは瀬名君の赤ちゃんを……。


それが女性にとって、どれだけつらいことか。


私には想像が出来ないよ。


瀬名君に知らせなかったのは、彼女の優しさだったんだと思う。


すごいよ。


私にはとても出来そうにない。