「瀬名君、玄関で立ち話じゃお客様に失礼だわ。どうぞ、あがってください」


玄関に顔を出したみゆきさんが、二人に優しく語りかける。


みゆきさんが薫さんをリビングに招き入れると、蒼甫君とおじさんは気を利かせて、それぞれの部屋へと向かった。


私は台所へ行って、みゆきさんとお茶の準備に取り掛かった。


「ごめんなさい。明日帰るから、どうしても話しておきたくて」


リビングから薫さんの声が聞こえてくるけれど、瀬名君の返事は聞こえない。


「優月ちゃん、私も自分の部屋に行くわ。だから優月ちゃんが、このお茶運んでくれる?」


みゆきさんが、小さな声で言った。


私ははいと返事をし、リビングにお茶を運んだ。


二人は沈黙のままだ。


とりあえずテーブルにお茶を置き、立ち去ろうとした時だった。


「優月ちゃん…だっけ?ここに居てくれる?」


「えっ?でも、あの…」


「裕樹が口をきいてくれないから、一緒に居て欲しいの」


う…。


そ、そんなぁ~。


気まず過ぎる…。