「それって嫌いになって別れたわけじゃないから、つらいね」


突然、何も言わずに消えちゃうなんて悲し過ぎる。


「ーで彼女、瀬名に何の話だったの?」


「それがさ、やり直せないかって言うんだ。

ったく冗談じゃねぇよな。

勝手にいなくなったくせに」


や、やり直す?


突然消えたのに?


今日たまたま偶然再会しただけで、なんでそんな事が言えるんだろう?


信じられない…。


「今日はごめん。ちょっとビックリしただけだから。明日はちゃんと仕事するよ」


そう言うと瀬名君は立ち上がって、店の外へ出て行った。


瀬名君、なんだかつらそう…。


「そう言えばさ」


蒼甫君がハッとしたような表情をする。


「ん?」


「前に瀬名が中学の頃の話をしてくれたことがあったんだけどさ。

その時に、元カノの話を聞いたんだ。

本気だったのに、こっぴどいフラれ方したって。

かなり傷ついて、相当落ち込んだらしい。

あれは、薫さんの事だったんだな」


「そうなんだ…」


瀬名君が、過去にそんなつらい失恋をしていたなんて知らなかったな…。


「それなのに今さら戻りたいって言われて、ハイそうですかって戻れるわけないよな」


瀬名君の気持ちを考えると、私と蒼甫君はせつなくなってしまった。