花火大会から数日経った、ある平日の午後のことだった。


ランチタイムが過ぎて落ち着いたので、三人で少し遅いお昼をいただいていた時だった。


「裕樹?」


綺麗な声に振り返ると、お店の入口に抜群にスタイルのいい美人が立っていた。


ウェーブのかかった髪が華やかで、思わず目を奪われてしまう。


「薫?」


瀬名君が驚きの表情を見せている。


「久しぶりね。まさかこんなところで会えるなんて」


女性は私達よりもずっと年上なんだろうと思われる。


大人っぽくて、色っぽい。


花柄の水着が、すごく良く似合っている。


瀬名君とその女性はどうやら知り合いのようだ。


「裕樹、少し話せない?」


その女性は、瀬名君を優しい瞳で見つめている。


私と蒼甫君はご飯を食べながら、二人の様子を目だけで追っていた。


瀬名君は黙ってうなずきスッと立ち上がると、その女性と店の外へ出て行ってしまった。


「蒼甫君、あの人誰だか知ってる?」


「さぁ…誰だろうな?瀬名の姉ちゃんの友達とか?」


蒼甫君も知らないんだ。


確かに年齢は、瀬名君のお姉さんくらいかもしれない。


一体誰なのかな?





しばらくすると、瀬名君はお店に戻って来た。


残っていたご飯を一気にかき込み、黙って厨房へと入って行った。


「アイツどうしたんだ?」


「さぁ…。わかんない」




その女性が現れてからというもの、瀬名君の表情は曇って元気がなかった。


蒼甫君も、やっちゃんも、ヘルプの女性二人も、瀬名君の様子がおかしいことに気づいているようだった。


どうしたんだろう?瀬名君…。


あの人に、何か言われたのかな…。