ドンッという音がして、黄色と緑の花火が上がった。


「花火、始まったな。とりあえず、もうちょっと海沿いへ行こう」


そう言って瀬名君は私の手を引く。


しばらく歩くと、人の少ないスペースで足を止めた。


どんどんあがる花火。


すごく綺麗だ。


こんなに近くで見る花火って初めてかも?


3000発くらいの規模だと聞いたけど、こんなに近くで見られるなら充分だ。


それにしても、瀬名君。


いつまで手を繋いでるのかな?


手を繋いでること、忘れちゃってるのかな?


「優月」


「ん?」


「なんか今日、雰囲気違う」


「あー多分、みゆきさんがしてくれたメイクのせいじゃないかな?

私、自分じゃメイクとか出来ないもん。

だから、初めて見る顔でしょ?」


みゆきさん、娘がいたらこんなふうにしてあげたかったと言っていた。


子供が欲しくてたまらなかったけど、二人には子供が授からなかったのだそうだ。


それを聞いていたら、すごくせつなくなった。


「優月はメイクとかしなくていいよ。学校にも、して来なくていいから」


「えっ?」


それって、どういう意味かな。


メイクなんかしたって、似合ってないのかな…。


なんかちょっとショック。


「だってさ。

こんなに綺麗になられたら、男にモテ過ぎて困るじゃん」


「……っ」


「っていうか、素顔が一番可愛いよ」


瀬名君ってどうしてこう恥ずかしくなるようなことを、照れもせずに言えちゃうのかな?


でも…。


ありがとう。