「優月」


突然名前を呼ばれて振り返ると、伝票を持った蒼甫君が立っていた。


「俺、そろそろ帰るよ」


私は伝票を受け取り、レジへと走った。


「今日はありがとね」


「こっちこそ」


「忙しくて、ほとんど話せなくてごめんね」


「いいよ。仕事中なんだから。
優月の働く姿が見れたしね。
それで充分だよ」


サラッと言われて、なんだか頬が熱くなってしまう。


「じゃあ気をつけて帰れよ。また明日な」


「うん。ありがとう。蒼甫君も気をつけてね」


「おう。じゃあな」


蒼甫君はそう言うと、ガラスのドアを開けてお店を出て行った。


ふと店内を見ると、女性客の視線が蒼甫君に集中していた。


「あの人すごくかっこいいー」


「あれって、青雲の制服でしょ?」


「青雲まで見に行っちゃう?」


うーん。 


やっぱり蒼甫君ってすごいな…。


あらためて感心してしまう私だった。