「あたし、冬休みに優月ちゃんに初めて会った時、あの子と優月ちゃんが重なって見えたの。
渋谷が好きだった、あの子と…」


やっぱりそうだったんだ…。


そうじゃないかなって思ってた。


「それに、面白くなかったの。
今まで一度も女の子を海に連れて来たことがない蒼甫が、初めて連れて来た優月ちゃんのことが」


「うん…」


「あんなにかっこいい瀬名君と一緒にいた優月ちゃんのことが」


「うん…」


「し、渋谷の好きな優月ちゃんの事がっ」


「うん…」


「憎かった。悔しかった。傷つけたかった」


「そっか…」


俺は甲斐の頭を撫でてやった。


甲斐は泣きじゃくっている。


「ごめん、渋谷」


「ん?」


「あんな方法で優月ちゃんを手に入れても、それは本当の愛じゃないよね」


「うん…」


「あたしも、本当に好きな人と付き合いたい。そうしたら、他に何もいらないのに」


「甲斐」


俺は甲斐の肩を抱き寄せた。


「じゃあ、俺と一緒にいよう」


「えっ?」


甲斐が目をぱちくりさせている。


「俺はね、正直なヤツが好きなんだ。今の甲斐は素直で可愛いよ」


「渋谷…」