「お前、俺の目を見て『瀬名君が好き』って言える?」


「えっ?」


「言えない?」


「はっ?言えるに決まってるじゃない。言うわよ」


「うん、じゃあ言って」


甲斐は俺の目を真っ直ぐ見つめている。


俺も甲斐を真っ直ぐに見る。


決して逸らさず。


真剣に。


「あたし、あたしは瀬名君が…」


「うん」


「あ、たし…は、せなく…んが…」


「甲斐…?」


「……。えっ、どうして?なんで言えないのよ。なんでっ?」


甲斐が頭を抱えて首を振っている。


かなり動揺しているみたいだ。


そんな甲斐に、俺もちょっと動揺してしまう。


「甲斐。お前、無理はするなよ」


「えっ?」


「無理するな」


「どういう意味よ」


「見た目や、能力や、才能や、目立つかどうかで相手を選ぶな」


「なによ、それ」


「本当に好きなヤツと付き合え」


「……」


「本当に好きなヤツは、理屈なんかない。ただ好きなんだよ。そうだろ?」


甲斐の頬に涙が流れる。


「好きじゃないヤツと付き合うのはよせ。そうしないとお前、壊れるぞ」


「うっ…ぅ」


甲斐は、ますます泣き始めてしまった。


この方法を教えてくれた神崎って…。


アイツにはまいったな…。