「1年の時から好きだった人がいたの。

その人、その頃は私より背が小さかったのよ。

でも中2の夏で追い越されて…。

3年になる頃には、私より15cm以上も大きくなったわ」


「へぇ…」


「ずっと彼一筋だった。でもね…」


「でも?」


「彼は他の子が好きだったの」


甲斐がせつなそうにうつむく。


コイツでもこんな顔をするんだなと、ちょっと失礼な事を思った。


「頑張ったけど、どうしても振り向いてもらえなかった」


「それはつらいよな」


「やきもち焼かせたくて、スポーツが出来てモテる人、顔が良くてモテる人、頭がいい人、生徒会長、先輩やら後輩やら、片っ端から付き合って、彼に見せつけたの」


うっ、それはかえって逆効果なんじゃ…?


「でも、無駄だった」


だろうね。


「彼には一人の子しか、見えてなかったの」


「その彼の好きな子って、どんな子だったわけ?」


甲斐がふぅとため息をつく。


「普通の子よ。本当に普通の…。

あまりに普通過ぎて、どう対抗していいかわからないくらい…」


そう言って、甲斐は窓の外に目を向けた。