裏の従業員出入り口から中に入ると、更衣室でカフェの制服に着替える。


白いシャツ、茶色のタイトスカートにカフェエプロン。


襟には短いネクタイ。


シンプルだけど可愛い、ここの制服が私は好き。


「お疲れ様です」


「お疲れ。早速で悪いんだけど、これ運んでくれる?」


店長に言われ、急いでフロアにまわると、トレーの上にココアが載っていた。


「四番テーブルね」


「はい」


これはきっと蒼甫君の注文だ。


蒼甫君はコーヒーが苦手なんだよね。


「お待たせしました」


かしこまった声で言うと、蒼甫君がビックリした顔で振り返った。


「優月が持って来てくれたんだ。サンキュ。

それ制服?

結構似合ってんじゃん」


ココアを片手に、にっこり笑う蒼甫君。


蒼甫君は笑うと極端に目が細くなるんだよね。


そんな爽やかな笑顔で言われると、なんだかちょっと恥ずかしい。


もちろん、すごく嬉しいけど。


「住宅街の中にポツンとあるのに、結構お客さん多いのな」


「ここのコーヒーおいしいからね。
蒼甫君、ゆっくりしていってね。
あっちに雑誌もあるからね」


「おう、ありがと」