「瀬名のことが好きなんだ」


みんなの動きがピタリと止まる。


「静華が、瀬名を…?」


渋谷君はゆっくりと呟くように話し始めた。


「アイツ、冬休みに瀬名に初めて会って、一目惚れしたんだ。転校して来たのも瀬名が目的」


あの海で会った時だ。


そう、だったんだ…。


「うまく青雲に転校出来たのは、親父さんの力だよ」


「親父さん?あぁ、そうか。そういうことか」


蒼甫君が苦笑いする。


「アイツは瀬名が竹内のそばにずっといることが気に入らなかったんだ。
だからどうにかして、竹内から瀬名を離せないか考えたんだ」


静華ちゃん…。


私、静華ちゃんに嫌われてたんだね。


友達だと思ってた。


私ってバカみたいだね。


「そこでまずアイツが考えたのが、竹内を生徒会に入れること」


「えっ?」


「竹内が7組の代表になったのは、裏でアイツがクラスの連中に根回ししてたんだ」


「そんな…」


ひどい。


仕組まれていたんだ。


だから、あんなに票が集まったんだ。


頭がクラクラして、足元がガクガクする。


「優月、こっちに」


瀬名君が私に手招きをする。


そして、椅子を引いて座らせてくれた。


瀬名君はいつも私を見ていてくれる。


久しぶりの瀬名君のさりげない優しさに、私は泣きそうになった。