私はいたたまれなくなって、渋谷君の前に出た。


「渋谷君は、私を助けてくれたの!」


シンとする教室。


蒼甫君と瀬名君が、目を見開いて私を見ている。


「あの日…。私、生徒会の帰りにカバンを取りに、一人でこの教室へ来たの」


「竹内、やめろよ」


渋谷君が必死に止めようとする。


でも。


でも、今言わなきゃ…。


「そうしたら急に電気が消えて、真っ暗になって、キャップ帽を被った、知らない男子が突然」


「もういいっ!」


そう叫んだのは瀬名君だった。


つかつかと私の前に近づいて来たかと思ったら…。





私は瀬名君に抱きしめられていた。


「もういい。わかったからもう言うな」


そう言って瀬名君は腕にぐっと力を入れる。


「ごめん。守ってやれなくて。本当にごめん…」


瀬名君は何度もごめんと繰り返し言った。


耳元に響く瀬名君のちょっと低い声に、私の目の前は涙で滲んでいく。


「せ…なくっ。うっ」


「怖かっただろ?

優月がつらい思いしてたのに、何も知らなくてごめんな」


そう言って瀬名君は、私の髪を優しく撫でてくれる。


何度も何度も。


瀬名君の手はあたたかくて優しくて、ほっとしてしまう。


私も気がつけば、瀬名君のブレザーにぎゅっとしがみついていた。